30代、欧州在住の主婦です。日本に住んでいた頃は、「問題が起こってから」つまり虫歯や痛みが起こってから歯医者さんに駆けこむ、という生活を送っていました。甘いものが大好きで、歯磨きを心がけているにも関わらず、しょっちゅう虫歯になり、両親に怒られながら通院したものです。結婚して外国住まいになってから、「危機は先手必勝で避けていこう」と思い立ち、半年に一回の頻度で歯医者さんに通うことにしました。
数年前に現住所に落ち着いてからは、町中の歯医者さんを試して歩くこともなくなり、ある女医先生のもとにずっとお世話になっています。先月も予約を取って行ってきたのですが、嬉しいことに虫歯などのトラブルは一切ありませんでした。「ではいつも通りのクリーニングをして、歯垢をとりましょう」と言われました。私は早くも歯茎が痩せてきているので、その分露出の大きくなった部分の歯は慎重に磨いてください、と指導されました。その際「でも、いつも通りにきれいにされていますね。お茶をがまんしなくても大丈夫ですよ」と、にこやかに言われました。
私は内心、びっくりしていました。初めてこの女医さんに口腔クリーニングをお願いした時、確かに「少し色素が沈着してますね…ワインを飲まれるのですか?」と聞かれたことを覚えていました。私はアルコールは飲めないが、紅茶の類が大好きなので人一倍飲んでいる、と説明すると「なるほど、じゃあお茶の色素でしょう。」と。ほんの小さなことですが、こんな風に個人的なことを覚えていてくれるなんて、と驚愕したのです。
この先生は地元の人の間でも「慎重な診察と治療」をすると評判で、ものすごい数の患者さんがいるのです。それなのに、こんな風に患者とのコミュニケーションを忘れないのは、もうカリスマと呼べるんじゃないかなあ、と思ったのです。こんな歯医者さんでしたら、自然に定期的に通うのも気持ちが楽になりますし、そこには信頼という関係が確かにあります。この先生に出会えた私はとても幸運だと、しみじみ感じています。